遠近両用レンズの累進帯長を知って快適な遠近両用メガネを作る
現在主流の境目のない累進設計でできた遠近両用レンズには「累進帯長」と呼ばれる規格があります。
この遠近両用レンズの累進帯長を知ることは遠近両用メガネを作る上でフレームの選び方、予算、仕上がりをよくする上でとても有用です。
HOYA社の遠近両用レンズを例に累進長帯で知っておきたいことを解説します。
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累進長帯とは
遠近両用のレンズは遠くを見るために必要な度数と、近くを見るための度数が1枚のレンズに配置されています。
この遠くの度数と近くの度数の配置されている縦の距離を「累進長帯」といいます。
14mmと11mmの2種類の累進帯長
HOYA社のレンズには14mmと11mmの2種類の累進長帯の遠近両用レンズが用意されています。(※一部例外の遠近両用レンズもあります)
標準的な14mmの累進長帯のレンズと、縦幅の少ない小さ目なフレーム向けの11mmの累進長帯と、使用するフレームに合わせて累進長帯を決定するのが一般的な使い分けになります。
一般フレーム用と小型フレーム用の2種
累進長帯の規格で重要なのは累進長帯が何mmなのかではなく、一般的なサイズのフレーム用か小型フレーム用向けのものかが重要です。
例えば、HOYA社以外のレンズには累進長帯が12mmのものもありますが、12mmのものより11mmのほうがより小型のフレームに適しているということではありません。
累進長帯を何mmで設計するかは各メーカーの設計思想によるものですので数字の大小にはとらわれないようにしましょう。
レンズの累進長帯を決定する原則
小型フレーム向けの短い累進長帯のレンズもレンズの屈折率などの品揃えごとに用意されていて、現在では予算や度数に応じた仕上がりを考慮して選べるようになっています。
累進長帯の長さを決定する要素は、遠近両用メガネを作成する際に使用するフレームの天地幅(フレームの縦幅)を基準に選ぶことになります。
意図的に累進長帯の短いタイプのレンズを使用したい場合は小型のフレームを選ぶ必要がありますし、一般的な累進長帯のレンズを使用したい場合は、小型のフレームでは推奨されません。
これは各々の累進長帯に推奨されるフレームの天地幅などが決まっているためです。
次の章では累進長帯ごとの特徴を比較しながら解説していきます。
累進長帯14mmの遠近両用レンズの特徴
累進長帯14mmの遠近両用レンズは「一般的なフレーム」向けのレンズとなります。
販売店ではフレームの陳列はセルフレームのコーナーやリムレス(枠なし)のコーナーなど、ある程度区分けされている場合が多いですが、紳士物や婦人向けのフレームで遠近両用を作成する場合に使用される累進帯長となります。
具体的には、フレームの天地幅が31mm以上(34mm以上推奨)ある場合、14mmの累進長帯の遠近両用レンズの中から選んで作成することになります。
レンズの価格的にはもっとも安いものからオーダーメイドの高価格なレンズまでありますので予算に合わせた遠近両用の作成がしやすいです。
近くの見え方に特徴がある
累進帯長14mmの標準的な遠近両用レンズで手元を見る場合、自然と手元を見る姿勢ではレンズの近用部を通して見ることができない方が多いです。
そのまま同じところを見たまま少しあごを上げることでレンズの近用部越しに見ることができるくらいで正解です。
姿勢がよくなるようなイメージですが、あまりあごが引けませんので少し窮屈に感じてしまう方もいます。
十分な近用視力が得られていても長時間の読書などには向かない方もいます。
小型のフレームで作成した場合
14mmの累進長帯のレンズを天地幅30mm以下のフレームで作成する場合、縦幅が足りなくなることで近用部がフレーム内に収まらずに加工時に削れてなくなることになります。
肝心の手元が見えなくなるのは本末転倒ですので天地幅が30mm以下の場合は累進長帯の短い遠近両用のレンズで作成するべきです。
累進長帯11mmの遠近両用レンズの特徴
累進長帯11mmの遠近両用レンズは「小型フレーム」向けのレンズとなります。
縦幅の少ない横長のフレームが流行したときにお客様のニーズに応えるかたちで登場したと記憶しています。
推奨されるフレームの天地幅は25mm以上30mm以下です。
削る前のレンズの外径が小さいので天地幅以外でも使用者の目の幅(瞳孔間距離)などでフレームの選択に制約がある場合もあります。
商品のラインナップと価格について
累進長帯11mmのレンズは現状遠近両用の標準的なレンズにはありませんので、一般的なメガネ販売店で購入される場合はレンズ代にある程度の予算が必要になります。
広告商品などの遠近両用メガネでは11mmの累進長帯のレンズは選べない場合が多いです。(フレーム自体も天地幅31mm以上の紳士物、婦人物の場合が多い)
ゆれ・ゆがみを抑えてあるのを売りにしているような遠近両用レンズになると、14mmと11mmのどちらも選べるようになっています。
小さ目のフレームで遠近両用を作成したい場合は最低価格が上がることになります。
手元にピントが合いやすい
累進帯長が短くなることで遠くの度数から手元の度数までの距離が短くなりますので14mmのものに比べ比較的自然な姿勢のまま近い距離にピントが合わせやすくなります。
逆な言い方をすると、少しの視線の移動でも大きく度数が変化することになりますので、14mmのものと比べると揺れやゆがみを感じやすくなるともいえます。
強度数の方は小さ目フレームできれいに仕上がりやすくなる。
近視の度数の強い方など、レンズの厚みが気になる方は小さ目のフレームを使用することでレンズの厚みを目立たなくすることができますので、累進長帯の短いレンズと併せて制作するのがおすすめです。
理想的な遠近両用メガネの作成方法
2種類の累進長帯のレンズを解説してきましたが、軽さやレンズの薄さといったメガネ本来の仕上がりも含めた形の理想的な遠近両用メガネの作成方法は、
- 小型のフレームを選択してレンズの厚み・重量を抑える
- 累進帯長の短いレンズで作成し手元も楽な姿勢で見ることができる
ある程度レンズに予算が避ける場合はこの組み合わせが理想的であるといえます。
例外もある
累進長帯が短いレンズは14mmのレンズに比べると揺れゆがみを感じやすいので、初めて使用する場合の手元を見るために必要な加入度数は+1.50以下であるのが望ましいです。
※加入度数については別記事で詳しく説明しています。
累進帯長と同じく遠近両用メガネを作る上で知っておきたい重要な項目ですので合わせてご覧ください。
まとめ
- 遠近両用には「累進帯長」呼ばれる規格がある
- 累進帯長は一般的なものと小型フレーム用の2種類がある
- 遠近両用レンズの累進長帯は使用するフレームの天地幅を基準に決定される
- 小型フレーム+短い累進帯長のレンズが理想的ではあるが度数によっては揺れゆがみを感じやすくなる
選んだフレームによって適切な累進長帯の遠近両用レンズが決定されることになりますので、あらかじめどちらの累進長帯のレンズになるか予算や仕上がりも含めた形で検討するようにしましょう。
累進長帯以外にも遠近両用メガネを作成する上で知っておきたい重要な要素はほかにもありますので、遠近両用の別記事も併せてご参照ください。
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用語の統一が出来てない
累進体長と累進長帯が混在している。
累進帯長の間違いでは?