メガネと視力について

元メガネ販売店店長がメガネと視力についての疑問にお答えします

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遠近両用メガネの選び方|購入前に知っておきたい10項目

      2015/01/21

老眼の症状がある方なら1度は購入を検討する「遠近両用メガネ」ですが、使用者の「慣れない」、「揺れや歪み」などの評価で躊躇している方も少なくありません。

本来、遠近両用のメガネは遠くの視力はもちろん、年齢と共に衰えた目の機能を補う上で40代以降必須ともいえるべきメガネです。

元販売者側から見た視点で正しい遠近両用メガネの事を知って今後の生活で活用して頂くために解説します。

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遠近両用メガネは何歳くらいから必要になるか

個人差はありますが40代に入る頃くらいから30~40cmくらいの手元の距離の物が見づらくなる、少し離さないと見えない、いわゆる老眼(老視)の症状が出てきます。

ごく初期ですと対応できる度数のレンズがない場合もありますが、「近くが見づらくなってきた」自覚症状がある方なら遠近両用メガネを使用することができます。

すでに近視や乱視の方でメガネを使用している人はメガネを掛けた状態で手元が見づらい場合は老眼の症状である可能性が高いです。

メガネを外した時に見えても掛けた状態で見えない場合は遠近両用メガネの使用を検討するようにしましょう。

遠近両用メガネの用途

遠近両用は車の運転も含めた充分な遠くを見るための視力を得られた上で、読書や事務処理などの近くを見るための視力も得られる理論上では万能なメガネです。

しかし、実際には遠近両用に限らず1組のレンズで全ての見え方を満足させるには限界があるのも事実です。

強いて言うなら遠近両用は遠くの見え方を重視して手元の見え方も補えるメガネとなります。

メガネを常用している方で老眼の症状があるなら一番目の選択として遠近両用メガネがあるのは間違いありません。

実際の使用で遠近両用の手元の見え方に不満がある場合は、用途を限定(遠くの見え方を犠牲)して手元の見え方をより重視した「中近両用」や「近々両用」、手元専用の「老眼鏡」との併用も検討するような柔軟なメガネの使用を考えるようにしましょう。

メガネの併用、使い分けは別記事で5つの種類に分ける形で詳しく紹介していますので参照してください。

また、老眼の症状についても別記事で解説してありますのでよろしければご一読ください。

遠近両用|見え方の仕組み

人がある程度以上の距離のものを見る時は、ほぼそのまま真っ直ぐ、若干アゴを引き気味で上目づかい気味に遠くを見ています。

手元などの近い距離になりますと、見ている対象を胸の辺りにしてアゴを引いて目線は下げて見ています。

近い距離のものを見る時がポイントなんですが、スマートフォンを使用したり本を読むときなど、目と同じ高さにおいて見る人はまずいないです。

遠近両用メガネはこの人間の生理的な動作をうまく利用したつくりになっています。

progressive-lens01

画像は単焦点レンズと遠近両用で一般的な累進レンズの度数の施され方の違いを比較したものです。

差が分かり易いように簡略化していますがこのような仕組みになっていると解釈いただいて問題ないです。

40代までの近視、遠視(老眼の事ではありません)、乱視の矯正や40代以降に老眼鏡で使用する単焦点レンズは度数はレンズ面全て一定(厳密には違いますが)なのに対し、遠近両用などに使用する累進レンズは縦方向に施される度数に変化がつけられ、レンズの下側に向かって手元を見るのに必要な度数へと無段階に変わるようになっています。

これにより、真っ直ぐ前を見た時は遠くが見える度数越しに視力が得られ、手元を見る際はレンズの下部を通して見ることで近くが見えるようになっています。

遠近両用メガネを作る際の度数測定・検査について

遠近両用メガネを作る際の検査は遠見視力(一般的な視力表を用いた遠くを見るために必要な度数を選定する検査)と、近見視力(近距離視力検査表を使用した近くを見るのに必要な度数を選定する検査。老眼鏡の度数選定と同じ)の2つの視力検査を行います。

遠近両用メガネを作成する度数の選定は、メガネ販売店でも眼科の処方箋どちらでも可能です。

遠近両用メガネの加入度数とは

遠くを見るための度数と近くを見るのに必要な度数が選定出来たら、遠用度数と近用度数の差を「加入度数」とし、遠用度数+加入度数で遠近両用メガネの処方度数ができあがります。

遠近両用メガネの加入度数とは遠用の度数を基準に近くが見えるように補正した値を加入度数として、レンズ下部に近くが見えるように配置する度数を指定しています。

別記事にて加入度数について詳細に解説しています。

遠近両用メガネの選び方|フレーム編

原則として遠近両用メガネを作る場合、どんなフレームでも作ること自体は可能ですが、予算や使用するレンズ、遠近両用を使いやすくするうえで若干の制約があります。

フレームを選ぶうえで知っておきたいことをまとめます。

最低限の縦幅を確保する必要がある

遠近両用のレンズには縦方向に度数が変化していることは先ほど述べましたが、遠くの度数を施してある部位と近くの度数を施してある部位間に一定の距離がありますのでレンズの種類ごとにメーカーで推奨されるフレームの最低限の縦幅を確保する必要があります。

推奨する縦幅が確保できないと遠く、もしくは近くの見えやすい部分がフレームの中に納まりきれなくなってしまい、レンズの性能を活かすことができなくなってしまします。

遠近両用の「累進帯長」を知る

レンズに施される遠くと近くの間の一定の距離ですが、これはメーカー、レンズの種類で違いがあります。

この一定の距離の事を「累進帯長」と言います。

例としてHOYA製の遠近両用のレンズには基本的に「累進帯長が14mm」のタイプと「累進帯長が11mm」の2つのタイプが用意されています。

累進帯長11mmのレンズは近年の小型(縦幅の少ない)のフレームに対応したレンズで14mmのレンズと併せてフレームの好みに合わせた遠近両用メガネの作成ができるようになっています。

累進帯長についても別記事にて詳しく解説していますのでご参照ください。

調整がしづらいフレームは避けて作成するべき

遠近両用メガネは掛けた際の目とレンズの位置関係が重要になってきます。

ざっと上げますと、メガネを掛けた際の目の位置(縦方向)、レンズと目までの距離、レンズの傾き具合などです。

遠近両用のメガネを作成する際は使用するフレームを掛けたときに目がレンズのどの部分に位置するのかを測定して、その目の位置に合わせてレンズを加工しフレームに収めて制作しています。

レンズの性能を生かすうえで目の位置に問題がある場合はフレームを調整して適正な位置にくるようにします。

目の位置を測定した値を「アイポイント」といい、メガネの制作前とお渡し時の見え方の確認とフレームのフィッティング時に重要な役割を果たします。

アイポイントについても別記事にて詳しく解説しています。

これらをミリ単位で調整してお渡しする場合もありますので、微調整ができないフレームは遠近両用には適していないと言えます。

具体的にはセルタイプのフレームや鼻のパッドがないフレーム、智の部分がデザイン的に調整できないようなフレームです。

フレームの調整が効きやすいか否かの判断は販売店のスタッフに確認、アドバイスをもらうようにしましょう。

遠近両用メガネの選び方|レンズ編

遠近両用メガネのレンズも素材、性能、価格の違いでピンからキリまであります。

累進レンズと呼ばれる遠近両用のレンズは複雑で緻密な設計で出来上がっていますので老眼鏡で使用する単焦点レンズと比べると割高になります。

レンズ設計が複雑なため、同じ度数の遠近両用でも使用者と使用するフレームに合わせて制作するオーダーメイドのレンズもありかなり高額のレンズも存在します。

もっとも標準的なレンズでの購入ですとフレームとレンズ一式で1万円程度からも作れますが、先ほどの累進帯長が短いタイプのレンズは用意されていなかったりしますので、一般的な紳士、婦人向けのある程度大きなフレームを使用した制作になります。

遠近両用レンズにも屈折率に応じた薄型レンズは存在しますが、レンズ設計が複雑な分、厚みは出やすくなります。

選んだフレームによって使用できるレンズに制約が出る場合がありますので予算に限りがあるような場合はレンズの価格も確認しながらフレーム選びと並行して選ぶようにしましょう。

遠近両用メガネを使うメリットとデメリット

メリット

一本のメガネで遠くから近くまでの視力が得られますので、メガネを常用している方は掛け外しのわずらわしさから解放されますので、第一選択として遠近両用メガネを作らない理由はないです。

これ以外に理由はないです。

デメリット

視力を得るのに万能な遠近両用メガネにも仕組み上弱点はあります。

手元を見るのに必要な度数(加入度数の値)が多くなるほど独特の見え方のクセが出てしまいます。

レンズメーカーの方に伺った話ですが加入度数が+1.50を超えてくると何らかの不満が出ても仕方ないとのことでした。

これを回避するには加入度数が+1.50未満のうちに遠近両用を使いはじめ累進レンズ独特の見え方に慣れるのが一番です。

逆に+0.75や+1.00程度の加入度数ですと遠くだけのメガネとほとんど変わらない使用感で明らかに視界が広いのを実感してもらえることが多いです。

もう一つの問題点は価格と使用できる期間が短くなることです。

遠近両用のレンズは仕組みが複雑な分単焦点レンズに比べ価格が高いのですが、手元を見るのに必要な度数は年々増加していきます。

個人差があるので一概には言えないのですが、1年程度で再作しないといけないことも頭の片隅において予算を検討する必要があります。

遠近両用の良く耳にする口コミ・評判は本当なのか

遠近両用メガネには「慣れない」、「揺れ、歪みを感じる」、「足元が怖い」など購入を躊躇してしまうような評判を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

これらが本当かどうかというと実際の使用者の口コミですから間違いではないです。

しかし、これらの問題のほとんどは遠近両用メガネの作成件数の豊富な販売者なら回避、解決が可能なものがほとんどです。

遠近両用に限らず使いづらいメガネには必ず原因があります。

それらを対処できる技術のある販売店、販売者にお世話になれるかどうかで遠近両用メガネの評価は大きく変わることとなります。

作る前に遠近両用メガネを試してみることは可能か

度数選定時にメーカーが用意しているテスト用のレンズにて試すことが可能です。

通常、遠用、近用の度数選定後に、その度数に合わせた遠近両用のテストレンズを装着して見え方、装用感を試すことができます。

テスト用のレンズなので実際の仕上がりよりも鮮明さに欠けるような場合もありますが、遠近両用メガネがどういったものなのか体感することができます。

おためしするのは販売店の遠近両用の技術を確認する上でも重要です。

揺れや歪みがひどいような場合、間違ってもそのままの度数で作成してしまうようなことはしないでください。

度数を調整することで軽減、改善ができます。

具体的な対処ができない場合、担当者、もしくは販売店の技術不足を疑った方がいいでしょう。

他にも購入可能な店舗があるようなら、そちらでも試してみることをおすすめします。

遠近両用メガネの納期について

近年は即日渡しのメガネ屋も多くなり、仕上がりまで数日掛かる販売店は利用を避ける方もいられると思いますが、遠近両用メガネに関しては原則特注レンズで1週間程度は余裕を見るようにしましょう。

即日渡しをする場合、販売店はレンズを度数ごとに在庫することになりますが、遠近両用の場合は、遠用度数と加入度数の組み合わせで膨大な数になりますので事実上全ての度数を在庫するのは難しいはずです。

また、使用者の度数だけでなく、目の幅や選んだフレームごとに微調整するオーダーメイドの高品質なレンズは、メーカー側も在庫の概念が最初からない商品もあります。

数日の猶予もない状況で遠近両用メガネを作成するのはお勧めできません。

まとめ

遠近両用メガネは知識はもちろん、測定や加工の技術が高い販売店でないと使いやすいものが出来上がりません。

ちまたにあふれている遠近両用の口コミを見ていると技術的に未熟な販売店が多いと思わざるを得ません。

労力を使ってでも信頼のおける販売店を見つけて快適な視生活が送れることを願っております。

 - 元メガネ屋が語る基礎知識, 老眼, 購入相談, 遠近両用

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Comment

  1. 阿部忠三 より:

    遠近両用でパイロットスタイルの両目尻が下がったフレームを欲しいのですが幾ら位でしょうか?。

  2. 鍛冶屋の政 より:

    アフィリエイト系のサイトなので、サイトを作ってる人が本当に眼鏡に詳しい人なのかどうかは不明だが、あえてコメントしてみる。
    返信もなさそうだけど。

    >>労力を使ってでも信頼のおける販売店を見つけて快適な視生活が送れることを願っております。

    作ってもらったけど合わない場合は、どうすればいいの?
    返品なんてできないでしょ?

    これまで、二回ほど遠近両用を作ってもらったが、二回ともひどかった。
    遠くがぶれる、ぼやける。
    乱視があるからなのか?

    1回目のときは4回ほどレンズを作り直してもらった。
    遠くが全く焦点合わず。4回目でもまだ駄目。仕方ないので、鼻パッドを縮めてレンズと目の距離を近づけたらやっと遠くの焦点が合った。
    フランスの首都を店の名前にしてるフランチャイズ店だった。

    2回目はもっとひどかった。
    遠近両用ということは言っていたのに、薦めたフレームは太めのセルロイド系で鼻パッドが無いタイプだった。
    確かにスタイリッシュでかっこよかったのでフレームはそれに決めた。しかし、当然ながらフレームで微調整できず。このサイトを先に見ていたら、このフレームにはしなかったかも。

    1週間ほど使ってみたが全くダメ。
    で、レンズを真横から見て斜めにすると(弦を上にあげると)、中長距離の焦点がピタッと合う。近距離も問題なし。

    これってどうなの?

    レンズ交換は可能だろうけど、再度遠近両用にするか、それとももう近視用にするか? フレームを考えたら遠近はあきらめた方がいい?
    消費税10%が始まるのだが、近視用の一般レンズにした際に返金される差額は、8%で試算なのか?10%で試算なのか?

    レンズを斜めにすると確かに遠くから近くまで見やすい。
    Add2.0るのでどうしてもぼやける、ゆがむ部分はあるが(特に側方)、それでも確かに遠くから近くまでは見える。

    かといって、外出先でもまさか弦を1cmも上げてレンズを斜めにするわけにもいかないし。

    乱視の人は遠近両用は向かない?
    それとも自分では気が付いてないけれど、斜視だったりするのだろうか(下方向への斜視?)?

    いずれにせよ、2回もこうひどいと遠近両用はやはり無理がある気がする。
    100円ショップで眼鏡の上に指す老眼レンズを買って装着したほうがいいかもしれない…

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